日蓮聖人の御遺文の一節に、「わざわいは口より出でて身をやぶる。さいわいは心より出でて我をかざる」とあります。
当時、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言し、世論の反発を受け会長を辞任しました。
当時、法務大臣を務めていました葉梨康弘衆議院議員は、同派の議員パーティの挨拶で、「だいたい法務大臣は朝、死刑のハンコを押しまして、それで昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職なんです」と発言し、大臣を更迭されました。
日本維新の会の石井章参議院議員は、立候補予定の同党女性新人の事務所開きの挨拶で、「5人出るのが全部女性でしょ。顔で選んでくれれば1番を取る」と発言し、後日謝罪しました。
たぶん受けを狙って冗談半分に言ったのでしょうが、まさに「わざわいは口より出でて身をやぶる」です。
人の心は他人には絶対に見えませんから、その人の発言により、この人は、日頃からこう思っているのか、こう考えているのかと判断されてしまいます。前述のような発言により、誤解が生じ、傷つく人もいるかもしれません。結果、思わぬ方向に事態が動き、わざわいとなり自分に返ってきました。
逆に、心からの善意や思いやりが込められた言葉や行動は、人々を元気づけ、励まし、絆を深めることができ、豊かな人間関係を築くことができます。その結果、人に信頼され、自分自身、幸福感に満たされた人生を築くことができるのです。
私たち一人一人が、口から出る言葉や内なる心のあり方を見つめ直し、周りの人たちを思いやる言葉を選び、行動することによって、みんなが幸せな社会をつくりあげることができるのではないでしょうか。
心の散歩道VOL.38(2023年発行)より
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