夏椿(なつつばき)

池の横の夏椿(なつつばき)が、今年も花を咲かせ始めました。
毎年この時期になると白く清楚な花を見せてくれますが、今年は例年以上に蕾が多く、たくさんの花を楽しませてくれそうです。濃い緑の葉の中に浮かぶ白い花は、梅雨の合間の境内を明るく彩ってくれます。

しかし、この花の美しさは長くは続きません。朝に咲いた花は、その日のうちに散ってしまいます。翌朝には、白い花びらがそのままの形で地面に落ちている姿を見ることができます。
「花の命は短くて」と言いますが、夏椿ほどその言葉が似合う花も少ないのではないでしょうか。だからこそ、一日だけ咲くその姿に、いっそう心を惹かれるのかもしれません。
夏椿は、しばしば仏教で有名な「沙羅双樹(さらそうじゅ)」と混同されることがあります。平家物語の冒頭にある、

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。

という一節で知られる沙羅双樹ですが、実は日本で一般に植えられている夏椿とは別の植物です。本来の沙羅双樹は、インド原産のフタバガキ科の樹木で、日本の気候では育てることが難しいとされています。
それでも、夏椿が「沙羅の木」と呼ばれることがあるのは、その白い花が一日で散る姿に、無常観を重ね合わせた先人たちの思いがあったからでしょう。
朝咲いて夕べには散る花。その短い命の中で精いっぱい美しく咲く姿は、私たちに「今この時を大切に生きること」の尊さを教えてくれているように思います。

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