法華経二十八品の中に、「提婆達多品第十二」というお経があります。お釈迦様が悪人成仏・女人成仏について説かれたお経で、お葬式やお施餓鬼、追善供養などの時によく読まれます。ただ、「方便品第二」や「お自我偈」に比べると、一般の檀信徒の方にとっては、あまり馴染みのないお経かもしれません。長いお経で、私も法事の時によく読むのですが、普通に読むと時間がかなりかかりますから、結構早いスピードで読みます。
先日ある法事で、その提婆達多品をいつものように早いスピードで読んでいましたところ、参列者の一人のおばあさんがお経に一緒についてこられるではありませんか。
お経が済んで、お墓参りに行く道中、「おばあさん、提婆品についてこらりょうたが。どこで覚えられたん?」
と聞きますと、
「数年前、家族に不幸が続いて悲しみに沈んでいたところ、お寺さんに供養のために読むように勧められました」と答えられました。
この提婆達多品というお経ですが、ちょっとやそっと読んだぐらいでは、いくらついて読むにしても宙で読めるものではありません。ましてや、若い方ならともかく、高齢の方がこのくらい読めるようになるには、よほど繰り返し何度も読まれたのでしょう。それも、故人の成仏を願って、心を込めて一生懸命・・・。
「おばあさん、そりゃあ、よっぽど毎日拝まれたんじゃなあ。このお経は供養の時によく読まれるお経じゃから、仏さんもきっと喜んでおられとるよ。これからも供養してあげられえな」
と言って別れました。
心の散歩道VOL.24(2009年発行)より

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