檀家のおばあさんが90才で亡くなられました。そのおばあさんには体の不自由な息子さんがおられました。小さい頃から病気のため、そう長くは生きられないといわれていたそうですが、家族の愛情に支えられ、68才まで生きることができました。実はその息子さんが亡くなられたのが、おばあさんの亡くなる15日前だったのです。
その時におばあさんは病院に入院していました。ですから、家族の方も高齢のおばあさんを気遣い、息子さんが亡くなってお葬式をしたことは知らせなかったそうです。ところがどうでしょう、息子さんがなくなられたのも急だったのですが、おばあさんの様態が急変したのです。
家族の方が声を詰まらせながらおっしゃっていました。
「お上人、こういうことってあるんですね。二人とも、まだまだ元気で、おばあさんには息子が亡くなったのを知らせていなかったのに後を追うように逝ってしまいました。常日頃、息子を残しては死ねないとは言っていましたが・・」
自分の役目はすんだ、今度は、息子一人で冥土の道を行かせるのは不安だと、あの世の心配をしたのでしょうか?
本年1月、息子さんの四十九日と合わせておばあさんの三十五日の供養を行い二人揃って納骨いたしました。おばあさん、息子さん共々霊山浄土に行かれていることを願っています。
心の散歩道 VOL.15(平成12年)より