中学時代の友人にS君という人がいます。彼は、高校を出て地元の会社に就職していました。ある時、突然彼が私を訪ねてきました。「わしに勉強を教えてくれ」というのです。
話によると、今の会社は、地元採用(高卒対象)で入ったそうですが、社内の試験を受け、合格すれば、本社採用扱い(大卒扱い)となるから、がんばりたいというのです。でも、中学時代のS君を知っている私にとっては、まさかS君が勉強を教えてくれといってくるとは夢にも思いませんでした。私が、その時、高校の教師をしていたこともあり、頼ってきたみたいです。会社は玉野にあり、そこから、会社が終わってから来るから、是非頼むというのです。学科は五教科で、大学入試問題レベルだそうです。
週一回の特訓が始まりました。彼にとって一日仕事をした後、車で一時間近くかけて来てからの勉強ということで、かなりつらく思えます。ところがどうでしょう、教えることすべてを吸収していくのです。「数学いうて、おもしれんじゃなあ」「力学のこの辺は特におもしれえ」そうなると、教え甲斐があります。もっとレベルの高いことを教えたり、応用問題なんかも出したりしました。このような生徒はどんどん伸びます。「おい、Sちゃん、なんで中学校の時からもっと勉強せなんだんじゃあ」と言うと、「たしかにそうじゃなあ」と笑ってました。
学校の勉強、特に義務教育では、先生、親からの押しつけという感がありますが、Sちゃんの勉強は自発的に、必要に駆られて始めたのですから、吸収力が違ったのでしょう。その後、彼は成績優秀者に選ばれ、中央の研修機関で半年くらいの講義、研修等を受けて、優秀な成績で本社採用の試験に合格しました。今では、会社の中堅どころで部下も数十人いるそうです。
今でも会うと、「秀ちゃん、あの時は世話になったなあ、一生の借りができたなあ」と言いますが、結局本人のやる気しだいですね。一生涯勉強と言われます。勉強に早い、遅いはありません。今からでも間に合うかもしれません。
心の散歩道 VOL.14(平成11年)より

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